新型コロナとインフルエンザ、風邪症状がでたら両方検査すべき?


10月以降は例年だとインフルエンザ流行時期に入ります。

今年はインフルエンザは流行らないんじゃないか、逆に従来のコロナウイルスの伝播モデルからSARS-CoV-2 の流⾏を推測した研究によると、次の冬季にCOVID-19 の⼤きな流⾏が起こることが予測されています※)が、実際に感染症(風邪)症状がでたらどうすればよいのか?熱がなくても病院を受診したほうがいいのか?ちゃんと検査はしてもらえるのか?など不安になると思います。

今回、日本感染症学会より『冬のインフルエンザと新型コロナウィルスに備えて』が公開されていましたので、新型コロナウィルスとインフルエンザの違いや新型コロナウィルスの検査適応の目安、インフルエンザの流行やお薬の情報なども交えてご説明します。

ただし、新型コロナウィルスの状況は流動的であり、今後多くの新情報や知見が出てくると方針も変わることが十分に考えられますし、新型コロナウィルスのPCR検査や抗原検査も全ての医療機関で受けられるわけではないので注意してください。

※)Sakamoto H, Ishikane M, Ueda P. Seasonal influenza activity during the SARS-CoV-2 outbreak inJapan. JAMA 2020; 323: 1969-1971.

インフルエンザと新型コロナウィルスの違い

2019-2020 年シーズンのインフルエンザについては、A(H1N1) pdm09 による700 万⼈規模の⼩流⾏に終わりました。

これは、COVID-19 対策としての⾶沫感染対策、および⼿指衛⽣等の予防策が、インフルエンザについても有効であったことを⽰唆していますが、インフルエンザ患者減少は世界的に⾒られ、SARS-CoV-2 の出現が、インフルエンザ流⾏に何らかの原因で、⼲渉したとの説も考えられています※1)。同時流⾏が起こるか⼲渉がみられるかは、今年夏季の南半球の流⾏状況をみていると、インフルエンザは例年に比べると少ないんじゃないかと感じています。

※1)Lina B. Clinical Manifestations of COVID-19, influenza and RSV: full webinar

新型コロナウィルスとインフルエンザとの鑑別を⾏う試みがなされています。

Luo らは、COVID-19 肺炎とインフルエンザ肺炎とを、それぞれ1,000 例以上集積した上で⽐較し、⾎液検査所⾒の多変量解析により、両者の鑑別が可能であるとしていますが※2)、日本は現時点ではインフルエンザは簡易抗原検査、新型コロナウィルスはPCRか簡易抗原検査しか行えないので、今後の検査体制に注目です。

※2)Luo Y, Yuan X, Xue Y, et al. Using a diagnostic model based on routine laboratory tests to distinguishpatients infected with SARS-CoV-2 from those infected with influenza virus. Int J Infect Dis 2020Jun; 95: 436-440. doi: 10.1016/j.ijid.2020.04.078.

インフルエンザとCOVID-19 の臨床上の相違について

インフルエンザ新型コロナウィルス
症状の有無高熱(ワクチン接種の有無により程度に差がある)発熱に加えて、味覚障害嗅覚障害を伴うことがある
潜伏期間1-2日1-14日(平均5.6日)
無症状感染10% 
無症状患者では、ウィルス量は少ない
数%~60%
無症状患者でも、ウイルス量は多く、感染⼒が強い
ウィルス排出期間5-10 ⽇(多くは5-6 ⽇)遺伝⼦は⻑期間検出するものの、感染⼒があるウイルス排出期間は10 ⽇以内
ウィルス排出ピーク発病後2,3 ⽇後発病1 ⽇前
重症度多くは軽症~中等症重症になりうる
致死率0.1%以下3-4%
ワクチン使⽤可能だが季節毎に有効性は異なる開発中であるものの、現時点では有効なワクチンは存在しない
治療タミフル、リレンザ、ラピアクタ、イナビル、ゾフルーザ、シンメトレル軽症例については、確⽴された治療薬はいが、アビガンが年内に承認されるかも
今冬のインフルエンザと COVID-19 に備えてより作成

外来診療の場において、確定患者と明らかな接触があった場合や、特徴的な症状(インフルエンザにおける突然の⾼熱発症、新型コロナウィルスにおける味覚障害や嗅覚障害など)がない場合、臨床症状のみで両者を鑑別することは困難です。

新型コロナウィルスについては、地域により流⾏状況に⼤きな差異があります。患者の発⽣がみられ、新型コロナウィルス患者に遭遇する蓋然性の⾼い地域では、冬季に発熱患者や呼吸器症状を呈する患者を診る場合は、インフルエンザと新型コロナウィルス の両⽅の可能性を考える必要があり、新型コロナウィルスの流⾏レベルの目安(下図)も加味して診療が行われることが予想されます。

新型コロナウィルス流行レベルの目安

インフルエンザと新型コロナウィルスの検査

新型コロナウィルス 患者の発⽣がみられる地域での流⾏期にはインフルエンザと新型コロナウィルス の両⽅の患者に遭遇する可能性があります。

臨床診断のみでインフルエンザとして治療を⾏う場合、新型コロナウィルス を⾒逃してしまうおそれがあります。そのため、原則として、新型コロナウィルス の流⾏がみられる場合には、インフルエンザが強く疑われる場合を除いて、両⽅の検査を⾏うことが推奨されています。

特に、高齢者やハイリスク者では検査を積極的に検討する流れとなりそうである。各流⾏レベルにおける、インフルエンザ様症状を呈する患者に対するSARS-CoV-2 検査の適応指針を下表に⽰します。

ただ、新型コロナウィルス の検査の供給は限られていますので、流⾏状況により、先にインフルエンザの検査を⾏い、陽性であればインフルエンザの治療を⾏って経過を⾒ることも考えられます。

また、実際には、都道府県ごとのリスクアセスメントによって変わる可能性はあると考えられる。

Level新型コロナウィルス(抗原検査迅速キット、PCR)の適応の目安
1原則不要。
14 ⽇以内に、陽性例の報告のあった都道府県への移動歴(居住歴)がある、または移動歴(居住歴)のある者との濃厚接触がある場合には考慮する。
214 ⽇以内に、陽性例の報告のあった都道府県への移動歴(居住歴)がある、または移動歴(居住歴)のある者との濃厚接触がある場合には考慮する。
14 ⽇以内にCOVID-19 のクラスタ−発⽣があった都道府県内地域への移動歴(居住歴)、または移動歴(居住歴)のある者との濃厚接触がある場合には考慮する。
314 ⽇以内に、陽性例の報告のあった都道府県への移動歴(居住歴)がある、または移動歴(居住歴)のある者との濃厚接触歴がある場合には考慮する。
14 ⽇以内にCOVID-19 のクラスタ−発⽣があった都道府県内地域への移動歴(居住歴)、または移動歴(居住歴)のある者との濃厚接触がある場合には考慮する。
14 ⽇以内に濃厚接触者の定義に当てはまる場合には⾏う。
4発熱がある場合には全例⾏うことが望ましい。
今冬のインフルエンザと COVID-19 に備えてより作成

インフルエンザについては、以前より抗原迅速診断キットが普及していますが、新型コロナウィルスについても抗原検出⽤キットが開発されています。

この抗原迅速診断キットは、PCR 法に⽐して感度が低いとされています※1), ※2)が、発症第1 週に検査を⾏えば、感度・特異度とも⾼かったとする報告もあります※3)し、迅速キットであれば、30分程度で検査できるし、陽性の場合は、その場で確定診断とできるので、臨床現場では選択肢としてアリだと思います。

ただ、インフルエンザの抗原迅速診断キットと異なり、新型コロナウィルス抗原迅速診断キットの供給量は限られていることと、無症状者のスクリーニングには推奨しない※4)とされています。

また、インフルエンザと新型コロナウィルスの検査が同時にできるキットも開発されているので、今冬には同時にできる可能性が高いです。

※1)Scohy A, Anantharajah A, Bodéus M. Low performance of rapid antigen detection test as frontline testing for COVID-19 diagnosis. J Clin Virol 2020 May 21; 129: 104455. doi:10.1016/j.jcv.2020.104455.

※2)Mak GC, Cheng PK, Lau SS. Evaluation of rapid antigen test for detection of SARS-CoV-2 virus. J Clin Virol 2020 Jun 8; 129: 104500. doi: 10.1016/j.jcv.2020.104500.

※3)Porte L, Legarraga P, Vollrath V, et al. Evaluation of novel antigen-based rapid detection test for the diagnosis of SARS-CoV-2 in respiratory samples. Int J Infect Dis 2020 Jun 1; S1201-9712(20)30405-7. doi: 10.1016/j.ijid.2020.05.098.

※4)富⼠レビオ株式会社. エスプラインSARS-CoV-2 製品情報

インフルエンザと新型コロナウィルスの診療の流れと治療

実際の診療現場では、インフルエンザと新型コロナウィルスの両⽅を同時に検査する場合のみならず、どちらかを強く疑って検査を⾏うこともあると思われます。これら場合における診療検査の進め⽅の考え⽅のフローチャートが日本感染症学会により示されていますのでご参考にしてください。

新型インフルエンザの診療、検査フローチャート
今冬のインフルエンザと COVID-19 に備えてより引用

今冬、インフルエンザと新型コロナウィルスが同時に流⾏することが懸念されており、実際にはインフルエンザは新型コロナウィルスよりも多くの患者数が予想されます。

今冬の発熱患者診療の治療の主体はインフルエンザとなりますが、新型コロナウィルスの非重篤患者に対して、アビガンが10月中にも製造販売承認事項一部変更承認申請を行う予定としているので、今後の治療にも期待ができる可能性がある。

2018 年にバロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ○R、以下、バロキサビル)が市販されたこともあり、⽇本感染症学会では、抗インフルエンザ薬の適正な使⽤を⽬的として提⾔を⾏ってきました。2019 年10 ⽉の「〜抗インフルエンザ薬の使⽤について〜」では、バロキサビルについては,まだ⼗分なエビデンスに乏しく,今後の基礎および臨床のデータの蓄積と解析により,その使⽤⽅針に変更の可能性があります。とされていますが、国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターの抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランス 2020年08月11日では2019/2020シーズンのゾフルーザの感受性は他の薬と比較しても変わらない結果となっているので、今のところ効かないんじゃないかと心配しすぎる必要はないかもしれない。

注意点

このブログを書いている時点では、新型コロナウィルスの抗原検査迅速キット、PCRはいずれも届け出が必要で、行政検査とされています。そのため、全ての医療機関で検査ができるわけではないので事前に確認が必要です。

また、今後多くの新情報や知見が出てくると方針が変わる可能性もありますし、新型コロナウィルスの流行状況や医療機関の受診状況によっても診療の方針などは流動的になることが予想されます。

まとめ

どのくらいの症状で受診したらいいか悩んでしまう方も多いと思いますが、発熱症状がある場合やインフルエンザ、新型コロナウィルスにり患している人との接触後で症状が出た場合はすぐに医療機関を受診し、インフルエンザと新型コロナウィルスの鑑別診断をしましょう。

インフルエンザと新型コロナウィルスの流行状況をよく把握し、流行地域で生活する場合には、アルコール消毒やマスクの着用を欠かさずに行いましょう。

インフルエンザの流行の確認は国立感染症研究所のインフルエンザ流行レベルマップから確認できます。

私のブログで、アルコール消毒の仕方や量、マスクの向きや選び方などもよかったら参考にしてください。

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